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あれが幽霊というものならば、俺は一度だけ見たことになるのかも知れない。

773 :ウラトガシ:2007/09/05(水) 10:23:30 ID:5pK24PYwO

もう、四、五年前の事になるか。
あれが幽霊というものならば、俺は一度だけ見たことになるのかも知れない。



俺が、当時通勤に使う道の内、途中峠のような道を通る。
道幅はそれなりにあるが、カーブが多くて見通しがあまりよくない。
ガードレールも、有る所と無い所がある
しかし、地元の人間くらいしか使わないから交通量は少なく、あまり事故があったとは聞かない。
俺は朝と晩にその道を通る。
その晩そこを通ったのはもう深夜に近かった、夕方まで小雨が降っていた、夏の晩の事である。


774 :ウラトガシ:2007/09/05(水) 10:26:22 ID:5pK24PYwO

カーブの出口の所で、白い半袖ワイシャツを着た男がガードレールに手を突いて、崖の下のどこか一点を見ていた。
周囲に車は無い。
俺は徐行して、どうしたのか聞いて見ようとした。
だが思いとどまる事にした。
状況から考えて、この夜中に、街灯もロクにない山道を歩いて、ここまでくる者は、普通いない。
俺は徐行したまま、その男の後ろを通り過ぎ、10m程移動した後、そっと後ろを振り返ってみる。
思った通り男はいない。数日前、朝ここを通った時に、この場所にパトカーが数台、停まっていた事を覚えている。
ガードレールがかなり大きくヒシャゲテていた。
先程、彼が手を突いていたガードレールは、やけに白く光った、真新しく張り替えられた物だ。


775 :ウラトガシ:2007/09/05(水) 10:36:24 ID:5pK24PYwO

家に帰ると、俺は寝ている妻を揺すり起こし、今し方見てきた次第を話した。
彼女は多分、半信半疑だったろう。
同時に、話している俺自身も、今し方目にしたことが、実は夢ではなかったか
そう思い始めていた。
月末の、連日残業が続く中、たとえ運転中であったとしても、ほんの一瞬ウトウトして、幻覚を見たとしても、けして有り得ない話ではない。
だが、二、三日の後、それがけして夢とも言えない事を知らされた。
その話を持ってきたのは妻だった。

やはり、あの場所で数日前に事故があったそうである。
車は、ガードレールに乗り上げ、下の林の中に転落したそうである。
但し、その現場には、遺体、或いは運転者がいない、
そして、あろう事か、その車の持ち主は、妻の友人の夫だった。


776 :ウラトガシ:2007/09/05(水) 10:43:49 ID:5pK24PYwO

妻の友人は、なんの連絡もなく、夫が帰ってこない翌日の午後、会社に出社の有無を確認した後、警察に捜索願いを出したそうである。
しかし、それよりも早く、車はあの現場で発見されていたそうである。
社内の書類から、車の持ち主はすぐに判明した。
現場の状況からして、運転を誤って、カーブを曲がり切れずに転落した、そう判断するのが妥当だろうと思われた。
ただ、当の運転者本人が見つからない。


777 :ウラトガシ:2007/09/05(水) 10:46:27 ID:5pK24PYwO

薄暗い林の中を、警察は下草を分けながら捜したが、やはり何も見つからない。

家族にとっても、警察にとっても、捜索人本人が見つからねば、そこより先に進めない。
一時は蒸発、あるいは偽装殺人説まで出たそうである。
俺があの時、彼を見たのは、事故の発生から四、五日してからの事になる。


779 :ウラトガシ:2007/09/05(水) 10:51:17 ID:5pK24PYwO

俺が妻にその話を聞いたのは、漸く遺体が発見された、事故から十日ほどしてからの事である。
夏の盛り、木々に葉が生い茂る季節、その木の一本に、遺体は引っ掛かっていたそうである。
転落時に、ドアから外に放り出されたのだろう。
これで、あきらめもつき、葬儀も出すことができると
妻の友人が、近況と通夜の日時を知らせてきて、そこで初めて知った事実である。
今もあの場所には、定期的に花が供えられているそうである。
警察も、或いは夜に、あの場所に行っていれば、もう少し早く彼を発見できていたのかもしれない。


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この記事へのコメント

久しぶりに来たら更新再開してた
遅ればせながら再開ありがとうございます

2009年12月10日木 URL #- /編集

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